ある暗殺者のその後

広大な大地
山があり森があり草原がありそして幾つもの建造物も見える。


ひとつの古びた石造りの建物
外壁は植物に侵食され天井は所々崩れ落ちているようである
祭事に使われていたのか中は広く天井はただただ高い
日の光を取り入れる為の窓も蔦により塞がれてしまい中は暗く
所々で崩れた天井より伸びる日光が中の様子を垣間見せるのみとなっている。



暗闇の中、小石が転がる音が凛とした屋内に反響し静寂を打ち破る
静寂の破壊者は一瞬目を丸くし
すぐに己の犯行と理解し苦笑いを浮かべ頬を掻いた
黒を基調とした身軽な姿 冒険者にしては淫靡な雰囲気をかもし出すその女は
軽く周囲の気配を確認し、己を笑う者の存在が居ない事を確認すると前進を再開した。



その歩みは闇に溶けるように静かで疾走するように早く
その者の存在を消し去るようでいて艶かしく進む




どれぐらい進んだだろうか
既に木漏れ日すらない黒しかない空間が永く続き
通常ならば進んでるのか戻ってるのかすら分からず精神を蝕むような異様な空間を
彼女は速度を落とす事無く瓦礫をかわし柱を避け
まるで踊るように歌うような姿とは裏腹に音も無く進んで行く




唐突に彼女が安穏を緊張に変え
歩みを止めると同時に物陰に姿を隠した
それまででも希薄な存在を更に無に変え意識を前方に集中する
いつ取り出したのか左手には真赤な刀身の剣が握られた。




・・・



・・・・・・







無が空間を支配した。




何分、何秒であろうか
気配の有無の確認後、最小限の露出で目視確認をする
眼前に広がる暗闇に光が差し其れを照らしていた


重厚な金属で覆われ漆黒と紫で彩色を施された身体
巨大な腕部、不釣合いなほど小さな脚部
人の形を模した魂無き鋼鉄の傀儡が其処に居た




それは崩れた天井部が創ったスポットライトに照らされ
膝を突き頭を垂れていた
既にそれが抜け殻だと認識できるほど鋼鉄の肢体は腐蝕
植物が根と茎を張り巡らしている


かつては此処を守護していたのであろう
冒険者との激闘に敗れ
其の骸だけがただ倒れることを拒み立ちはだかっていた




彼女はそれまでの張り詰めた表情を安堵に変え
無警戒でそれに近づいて行く。


旧知の親友に出逢えたような感覚
実際は彼女に屈辱を味あわせた張本人ではない同じ形をした”物”ではあるが
彼女はまったく其れに一片の恨みすら持っていなかった


全ては自身の未熟さと油断
それによる敗北
その敗北があってこそ彼女はここまで来れたと感謝すらしてる程だった


歩みは既に零距離となり其れの項垂れた頭部を見上げるほどの位置にまで来ていた
そっと胴体部分に拳を当てる
グローブの金属部との接触で小さく高い音が建物内に反響し響き渡る


眼を閉じ
金属の反響が静寂の耳鳴りに変わるまで
身体中にその音を染み渡らせる

とっくに終わっている反響音の余韻を名残惜しそうな表情をしながら彼女は眼を開けた。


「・・・そろそろ 行かないと・・・お宝はもう無いみたいだしね」
頬を掻きながら苦笑を浮かべた。


「よし」と背伸びをしながら振り返りその場を離れようとする
ふと、足を止め左手に握られた剣を見ながら立ち止まった


幾多の戦地を共にした戦友である愛刀


それを見つめながら彼女には一つの想いが巡っていた
しかし、決心がつかず悩んだり、困ったり、はにかんだり一人で百面相を始めた
「え〜い!決めたっ!」
言うと同時に剣を慣れた手つきで一回転させると同時に鋼鉄の骸に向き直り




剣をその足元に突き立てた


「あげるよ もう必要ないしね・・・」
優しい笑顔でそう言うとまた闇の中へ向き直り溶けて行った。





また日常である静寂が帰ってきた。
鋼鉄の傀儡の頭部から苔が抱えきれなかった水分が一粒だけ堕ち
雫は足元の紅剣に当たって砕けた。


かつて”楽園”と呼ばれていたそれは応える様に紅く光っていた。



−おしまい−

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近況

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モン×ドラ:結構張り付いてないといけないので仕事の片手間は難しいzzZ



完全な英雄難民です|ω=)zzZ


未だにあそこへの直リンクボタンが残ってますが
あの場所へは二度と戻れないのですね|=)zzZ